日廣薬品 インタビューその1:布絆創膏の開発、リーディングカンパニーとして
日廣薬品株式会社 代表取締役 金尾 元信様に、
「生産革新プロフェッショナルコース」の受講背景や、受講後の感想についてお伺いしました
※2021年12月開講受講、IE士
※所属・役職は2022年3月14日当時のもの、以下敬称略
布絆創膏の開発、リーディングカンパニーとして
吉田
それでは、日廣薬品 金尾さんにインタビューをさせていただければと思います。
はじめに、御社の事業内容について教えてください。
金尾
弊社は、富山出身である私の祖父が設立した会社です。元々曾祖父の代から富山で薬売りをしておりました。いわゆる配置薬でしたが、祖父の代で上京し絆創膏屋を始めたことが当社のはじまりです。
主力のニッコーバンという製品はちょうど発売から今年で50年を迎えました。この製品の特長は伸縮布製で、粘着剤を自社で製造しているため非常に粘着力が強くて、丈夫であるということです。
ニッコーバンのブランドコンセプトは「働く人を支える」であり、弊社の製品は漁師さんや飲食店、お花屋さん、美容室など仕事で指先を酷使する方々にご愛用いただいています。
もちろん絆創膏市場には大きなシェアを持つ会社も他におられますが、布製に限って言えば当社が非常に高いシェアを誇っております。丈夫で剥がれにくいという特長を持つ製品の製造販売をニッチな分野ですが、長年行ってきました。
吉田
布製の絆創膏を開発されたきっかけを教えてください。
金尾
戦前、日本では傷はガーゼを当てテープで止めて処置していました。それが戦後、海外からガーゼとテープが一体化した救急絆創膏が持ち込まれ、日本でも同じように絆創膏を作るメーカーが色々と出てきましたが、当時はビニール製が主だったと聞いています。
そこで創業者は「同じビニール製を作っても…」と考え、当時の企画担当と何か新しいものを作ろうと相談していたそうです。ちょうどその頃、大手の紡績会社さんも布を使ってメディカル向けに何かできないかと考えていて、そのお会社と共同開発し、この伸縮布製救急絆創膏を一緒に作り上げたことがはじまりです。当時としてはその伸縮性などから非常に画期的な製品であったと聞いています。
吉田
なるほど。御社の絆創膏の強みについて、是非もう少し詳しく教えていただけますか?
金尾
強みはなんといってもその防水性の高さです。貼り方や貼った部位により絶対とは言えませんが、例えば絆創膏を巻いた指を墨汁に漬けても、外側は布製のため真っ黒になりますが、中まで墨汁が染み込み、中のガーゼが真っ黒になるようなことはありません。その特長から、傷口からの感染を防ぐ必要や、衛生上の課題があるような職種の方々にとってはそのリスクを低減させるために欠かせない製品であり、差別化された製品としてご支持いただいています。
吉田
更に、その粘着性の高さにも強みがありますよね?
金尾
そうです。粘着剤も自社で調合して作っているため非常に剝がれにくいことが特長です。
自然由来の原料を主に使用しているため季節や産地によって柔らかさがまちまちの素材が入ってきます。
その不均一な素材をいかに一定の粘着剤に仕上げるかは、長年の調合ノウハウであり、競合他社と差別化されている部分だと自負しています。そして、その粘着力が指を酷使する方々にご支持いただいている大きな要因の一つだと思います。
大切な天然素材を使わせていただいているため、ゆくゆくは農園も自社で運営し、原料の部分から携わることができたら地球環境に配慮した製品づくりもできるのではないかと思います。
吉田
これからどのような方に御社の製品をご利用いただきたいとお考えでしょうか。
金尾
約2年前ですが、弊社としては初めてユーザー様へインタビューを実施しました。
弊社の場合、消費者接点は主に代理店様や小売店様経由となります。そのため、それまでほとんどユーザー像がわかりませんでしたが、インタビューを通じて、ユーザー様の生のお声、多くの嬉しいお言葉を頂戴することができました。
吉田
マーケットのユーザーインタビューしたのですね。具体的にどのような反応がありましたか?
金尾
インタビューの中で色々自社製品の選ばれる理由と使われ方を知りました。その中で、特に感動したのは介護士の方からいただいた「ニッコーバンに出会って世界が変わった」というお言葉です。
介護は、衛生面や訪問先への配慮には特に神経を使います。以前は、指に巻いていた絆創膏が外れて、知らない間に在宅介護先に置いて帰ってしまうこともあったそうです。
それが、弊社の製品と出会い、ずっとつきまとっていたその不安が払拭され、「ストレスがなくなり世界が変わった」「これがなければ仕事ができない」までおっしゃってくださいました。これは非常に感動的で夢のような話でした。
吉田
本当ですね。実際に使っていただいた方の感動体験が、会社にリアルに跳ね返ってくるほど嬉しいことは無いですよね。
金尾
たかが絆創膏ですがされど絆創膏、この方にとっては世界が変わったと言ってもらえる製品である。
これは私どもにとって非常に光栄なことでした。こうしたコメントを漁師さんや飲食店で働く方々から沢山頂いたのです。
ニッコーバンの製品のブランドコンセプトは「働く人を支える」です。まだ出会っていない指先を酷使して働く人々にもっと出会い、その方々に「世界が変わった」「これがなければ仕事ができない」と実感していただけたら、こんなに幸せなことはないと思っています。
弊社の製品に出会っていただく接点をより広げ、出会える場所やその方法を探ることが弊社の大きなモチベーションにもつながります。
吉田
まさにブランドコンセプトを反映して、「働く人を”支え続けている”」ロングセラー商品ですね。
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