伊庭講師インタビューその2|IEを取り巻く環境の課題とは?
生産革新プロフェッショナルコース講師の伊庭栄さん(日本能率協会コンサルティング シニア・コンサルタント)にお話を伺いました。日本能率協会の勝田健太郎がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
IEを取り巻く環境の課題とは?
勝田
では、次の質問ですが、日本のものづくりにおけるIEの環境や問題について教えてください。
伊庭
なかなか難しい問題ですが、われわれが1番問題だと思っているのは、10年か20年前の日本がまだものづくりで強かった時代の人たちから、いろいろな生産技術や改善技術が若い人へ伝承されていないことです。
伝承がないまま、若い人が外国へ行くこともあります。
武器も持たずに外国へ飛び込んでいくような状況ですから、それは苦労するでしょう。
管理職も職務に縛られすぎて、そういう技術を伝える機会がありません。
だから一口でいうと、弱体化していると感じますね。
自動車業界はそういうことが割と根付いている方です。
プチIEみたいな感じではありますが、IEに取り組むのが普通になっています。
ところが、他の業界になると、非常に弱いです。
自動車業界でも、教えられたことや狭い範囲のことはできても、なぜこうしなければいけないのかということを分からないままやっている人が少なくありません。
そういう人が外国へ行き、現地の人を教えるとなっても、戸惑い、苦しむのが当然の結果でしょう。
やはり基本に立ち返ったところからきちんと教えてほしいと思っています。
だから、教育のための教育ではなく、世界標準とは何なのかを知ってもらうため、議論を通じてお手伝いしているのです。
IEを取り巻く環境は、ピラミッド構造が逆ピラミッドになってしまい、うまく下へ伝わっていないのが現状です。
その結果、ものづくりが弱体化していると感じているわけです。
勝田
ものづくりの弱体化やグローバル化、そういう環境の変化の中で、このコースの講師を担当されるのにあたり、気をつけていることや心がけていることはありますか。
伊庭
まず、講師のテクニックとしては基本になるところをしっかりと再確認させなければなりません。
標準時間がなぜあるのか、このテクニックは何のためにあるのか、こういうことの歴史的な背景をしっかり確認してもらったうえで、これを応用していくことが大切です。
そういうことをちゃんと考えるように促すため、こちらから質問を投げかけるようにしています。
このコースに参加する人には、若い人もベテランの人もいます。
これから会社を引っ張っていく人、既に引っ張っている人などさまざまです。
いずれにしても、ここで学んだことを会社の中で生かさなければ意味がありません。
そうするためにはテクニックだけではだめなのです。
物事を起こして企画していける人になるにはどうすればいいのかを、参加者とやり取りする中で問題意識として植えつけるようにしています。
問題意識を引っ張り出し、自分で解決策を考えられるようにすることを意識し、やり取りすることも忘れないようにしています。
だから、単なる技術の改善ではなく、サプライチェーン全体に関わることを今回、取り上げているのです。
これから会社の中でいろんな改善を引っ張っていくには、こんな人物が必要になってくるでしょう。
自分1人でどうにもならないとき、周りをどうやって巻き込めばいいか、部下や若い人を巻き込むにはどうすればいいのか、幹部をどうやって引きずり出せばいいかまで、考えられるような人物です。
そういう人物が生まれたら、このコースが本当に意味を持つのではないでしょうか。
講師としてはその点を常に意識しています。
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