グローブライド インタビューその2:”正解がない”ものづくりとは?顧客理解をするものづくりとは?

グローブライド株式会社 フィッシング生産本部 ロッド製造部 副部長 大津 武則様に、「生産革新プロフェッショナルコース」の受講背景や、受講後の感想についてお伺いしました

※2021年10月開講受講、IE士
※所属・役職は2022年1月26日当時のもの、以下敬称略

”正解がない”ものづくりとは?顧客理解をするものづくりとは?

吉田
御社ではどのような部分に課題をお持ちでしたか?

大津
ロッドのものづくりは、熱硬化性樹脂を含侵したカーボンプリプレグ材料を主材料としたコンポジット成形であるので、素材の成形工程、塗装工程では、日々の環境条件で作業標準に補正値を加味(経験値)しながら生産しています。そのため生産性を改善しようという時に、技能者の官能や主観で取り組みが進むことが多く、思ったように標準化や改善が進みませんでした。
設計サイドの目的がうまく伝わらず空回りしたり、現場の理解が得られなかったり、離職者が出てしまうこともあり、やり方を見直さなければいけないと感じていました。

吉田
具体的にはどのような点で感じていましたでしょうか?

大津
まず製品の企画開発段階で言えば、例えばリール製品だと性能評価をある程度数値で表すことができ、軽量化や回転性能、剛性など技術要素の勝敗が判り易いのですが、実はロッド(釣竿)には”正解がありません”。ロッドは「感性」によるところが大きい製品なのです。
真鯛のロッドを一つ例に挙げても、ある地域で釣るロッドは短竿(2m)、またある地域では長竿(4m超)が必要になるなど、「釣るポイント」や「仕掛け」「ターゲットの大きさ」などの違いで、竿に求められる機能が異なります。国内でも異なりますから、世界で見た時に、単純に世界共通仕様にはできません。
ものづくりが「地域の釣り方に合っている」とか「釣り人の好み」などの感覚がものさしになっていることが多いです。
生産現場においては、先に述べたように生材を使用しているため、標準条件どおりにコントロールしきれない難しさがあります。これも国内の工場間は勿論、海外工場においては気温も湿度もまったく異なります。当然工場の環境は整備しますが、製品仕様の高度化も相まって、管理レベル・公差レベルも高くなっています。
ロッドのものづくり自体が技能(感覚値)で進めているような流れになっていたので、開発や生産の上では難しさを感じていました。

吉田
御社の「感覚を重要視する」部分は、言い換えると、ユーザーとの密着度が高いということにもなりますよね。

大津
そうですね。昔は、テスター(他のスポーツでいうプロ)の方がインフルエンサーだったのですが、最近では、各地域の一般の方のSNSの発言のほうが、ものすごく影響力があるんですよね。
そこを意識し「どこの地域」の「どういう釣り」なのか、そのターゲットを定め、弊社の社員が釣りをやり込みながら仕様を作り上げていく。そうした点では、非常に密着度が高いと思います。

吉田
製造とエンドユーザーは距離が遠く、「作っているもの」と「使いたいもの」のギャップが生まれがち、ということをよく聞きますが、御社ではその距離が近いように感じますね。

大津
そうですね。弊社ではそれを当たり前に捉えていましたが、製造とユーザーの距離は遠くはないとは思います。

吉田
ユーザーニーズを汲み取れる仕組みができているということは、技術だけではなく、人間性も強みになっていると思うのですが、いかがですか?

大津
そうですね、そこは強みだと思います。でも同時に、生産技術的な立場からいくと、それが故になかなか生産性が上がらないという見方もできるかもしれません。
結局、先ほど言った真鯛のロッド(釣竿)だけでも、地域によって差があり、国内でさえ仕様が一つに統一できない状況です。
これがアメリカやヨーロッパにいくと、もっと異なります。過去には、「釣り具市場では日本が一番なんだから、日本で作ったものをそのまま売ればいい」と海外に持ち込み、全く売れないという失敗がよくありました。
その失敗から学んで、実際に現地に足を運び釣ってみることで、地域によって考え方も、釣り方も全く違い、求められているものが全く違うということが分かります。

吉田
プロダクトアウトの部分から多様なニーズを汲み取ってマーケットインしていく流れが徐々に出来上がってきたのですね。
先程、ものづくりの難しさという部分を聞かせてもらいましたが、大津さんが、製造現場の方たちに向けて意識的に働きかけていることはありますか?

大津
今回の受講をきっかけに関連会社と一緒に更なる生産性向上活動を始めていますが、この2年は毎週現場に足を運び、共に進めています。

吉田
現場の理解を得ながら活動が推進できるよう、実際に足を運び、現場との対話を大事にされていらっしゃるのですね。

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