ダイトインタビュー|工場におけるプライドの良し悪しとは?
ダイト株式会社 村中秀彰様(生産本部生産管理部 課長)にお話をお伺いいたしました。日本能率協会の平井希実がインタビューします。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)
工場におけるプライドの良し悪しとは?
平井
本日は、ダイト株式会社、生産本部生産管理部課長、村中秀彰さまに日本能率協会の平井がインタビュー致します。
それではまずはじめに、生産革新プロフェッショナルコースを受講していただいた経緯をおうかがいしてもよろしいでしょうか。
村中
『生産管理のあるべき姿を知っているべきだ』と考えていた上司のすすめです。
上司が、日本能率協会の生産革新プロフェッショナルコースを見つけて、最初は本人が行くことも考えていたようなのですが、本人が受講するか、もう少し年次が下の人間が受講するべきかを検討した結果、私が受講することになったようです。
工場で長く働いている人というのはどうしても新しい発想を持ちにくく、日常こなしていることが当たり前になってしまいがちです。
本当はそういう方が、他社の工場見学をして、『うちのやり方はこうでも、あの会社はもっと違うやり方をしていていい・・・』と、色々なことを見て、感じて考える機会が必要なのです。
ところが、自分も含めて工場で働く人というのは、自分の工場の悪いところがわかっていても、こういうところが他より優れているというプライドもあわせて持っているように感じています。
それがいい意味のプライドならばいいのですけれど、時には新しい意見を受けつけないということになりがちなのですね。
私の上司にしろ、私にしろ、配属になったときは今までの仕組みがよくわかりませんでした。
物を作っていることは知っていて、その機能もわかっていますが、『何故そんなやり方をしなければならないか、何故これができないのか』と自分自身がよくわからない感じで『何となく』進めてしまっていました。
私は、原薬の品質保証経験後、10年ほど製剤の営業を担当していました。今の上司も、研究開発の技術出身で、品質保証の時代にも一緒に仕事をしていた時期があります。
ただ,2人とも生産管理としての経験はありませんでした。上司も現状を何か変えたいと考えていました。
そんな中、生産管理のあるべき姿を知っているべきだという思いをもって、この研修に魅力を感じたようですよ。
平井
ありがとうございます。そのようなお言葉を頂けて事務局として光栄です。
現在従事されている、原薬の生産管理の仕事について、簡単に教えてください。
村中
私が主にやっているのは、原薬の全体的な長期の生産計画の立案です。
工場が需要に対して供給が追いつかない状況になっていて、営業と生産の量や順番の組み替えの調整をやっています。
ほかにも、原薬の生産における購入原料の課題とか、変更プロセスに関する問題とか、生産側の立場から会議体なり協議会に出なければいけない時は、自分がチームの代表として出席しています
工場における共通言語の必要性とは?
平井
営業から生産管理へ異動されて、衝撃を受けたこと、戸惑ったことはどのようなことでしょうか。
村中
正直に言うと、戸惑ったのは工場の文化とか雰囲気に慣れていないことですね。
営業は、弊社は人数も少なく、個々が業務の最初から最後までやっている感じがありますが、工場は人数が多く、業務を分担しているので全てを把握するというのが難しいです。なので、何か一つの業務のやり方とか流れについて「本当にこれが正しいのか?」と思っても、言っていいのか戸惑いました。
ただ、「何故これができないのだろう、こういうやり方をしないのだろう、できない理由はどこにあるのだろう」と漠然と感じることはあって、皆一生懸命やっているのですけど、どこかで余計な労力を使っていて一生懸命やっても報われない、工場で働く人たちが下を向いているというのが印象でした。
平井
生産革新プロフェッショナルコースでは、修了試験として、筆記試験と個人面談、グループ発表を実施しています。
本日は、村中さんが個人面談の際に書いてくださったシートを持って参りました。
今、おっしゃっていたお話は、現在の業務上の課題や問題点として書いて下さっていました。
今日の午前中に私も工場見学させていただいきましたが、村中さんが個人面談でおっしゃっていたことは、こういうポイントなのだろうと思うところがありました。
村中
自分が営業の頃の理解と工場に配属になってみてギャップを感じた例としては、生産期間、リードタイムと標準時間の考え方ですね。
弊社は医薬品の原薬と製剤を製造しているので、一言で工場といっても大きく3つに分かれています。
錠剤などを製剤する製剤製造部と、それらを包装する包装製造部があり、この2部門を通って製品が出来上がってくるわけですが、部門毎に管理方法など少しカラーが違います。
もう一つ、原薬の製造を行う原薬製造部があり、こちらは医薬品の効き目の成分の化学反応が主となるので、製剤工場とは製造設備が全く異なるので、先の2部門とは全くカラーが違ってきます。
青色と緑色の似て違うグループと、全く色の違う赤のグループと私は例えることが多いんですが、製造というまとまりでは同じでも細かいところは全然違っていて、それらが1つの敷地内に共存しているのですね。
製造現場は部署が分かれている一方で、間接部門の品質保証や、われわれ生産管理は部署としては1つです。ただその部署の中で製剤を見るチーム、包装を見るチーム、原薬を見るチームに担当が分かれていて、そこでは部署内で3つのカラーが分かれてしまいます。
平井
部署の中で、担当によってカラーが異なるのですね。
村中
はい。そうです。
そのために細かな部分で「社内の考え方の共通化」が上手くできておらず、管理帳票の様式の違いなどから標準原価や、マシン能力のまとめ方も異なってしまうということも起きています。
標準原価の例では、私は今は原薬担当ですが、営業の頃は製剤担当だったので弊社の製剤と包装の標準原価計算の仕組みをずっと見てきていました。
それが今、原薬の生産管理に来てみると、原薬の標準原価は製剤とは違う考え方で実施していました。良い悪いではなく単純に同じ工場なのにどうしてだろうと思ってしまうのです。
平井
社内での「共通言語」のようなものがないのですね。
村中
それは上層部も気づいていない部分の1つではないかと思います。
共通言語という表現をもらったところなのですが、IEの分析手法を用いて、分析して出てきた数字は真実で、分析対象部門やラインが異なっても比較ができるはずですよね。
弊社の工場は統一した方法での分析に弱い部分があり、全体的に定量的ではなく、定性的な表現で管理をしている点も、営業部門とは違うギャップを感じた点です。
営業はすぐ数字でわかるという点はありますが。
平井
ギャップを感じる中で、生産革新コースを10日間受講された感触はいかがでしたか。
村中
個人的な感想では、ものすごく勉強になりました。
セミナーで受けた衝撃とは?
平井
受講した内容を自社へ持ち帰って展開していくのが難しいかと思います。
村中
そうですね。『自分が会社に持ち帰らなければならないことがどれか』を常に意識するのは難しかったです。
購買やサプライチェーンなど、自分が業務を担当していない範囲のセミナー内容をどのように持ち帰るかとか、自分の知っている範囲と知らない範囲で、工場に持ち帰るべきなのはどれなのかを意識して聞くのに神経を使いましたね。
それを除いて、全体としては興味があって受講して良かったと思う講義ばかりでした。自分個人の幅を広げるという意味でもすごく勉強になりました。
良く耳にするようになった、IoTやインダストリー4.0も、弊社規模の工場だと、社内にいたらまず聞かない話ですし、本を読んで理解できるかと言えば、イメージがわかないまま活字を読むのと、一度話を聞いたあとに読むのでは理解が全然違うと思うんです。
1つ1つのテーマにすごく興味があって聞いていました。
平井
そういう目的意識を持って受講しておられる方とそうでない方で、やはり持って帰られるものは違うと思います。
昨年夏に当コースの講師である角田講師にインタビューを実施した際にも、「目的意識をもって受講して欲しい」というようなことはおっしゃっておられましたね。
村中
そうですね。IEの分析手法などの講義で加工や組み立てラインが例で出てきましたが、弊社の工場には、講義そのままのラインなんてどこにもありません。
そこで関係ないやと思うか、他の業種ではそんな製造ラインもあるのか、と捉えるかは大きな差になるでしょうね。
意識して聞いていると、弊社包装工場は最初は連合作業かなと感じたのですが、セミナー全体の講義の中で、ライン作業としてみた方がいいなとか、持ち帰るヒントが見えてきました。問題は、それをどう社内で伝えれば伝わるのかというところです。
平井
セミナーで学んだことを、ご自身で咀嚼をして社内でどう伝えるかという点が、難しかったのですね。
当コースは、フォローアップのため、「IE基礎テクニックオンラインセミナー」を特典としてお付けしております。
IEに関する知識を不安視される受講者の方が多くいらっしゃることから、皆様の自主学習のツールとしてお役立て頂ければという趣旨のものです。
村中さんはWEBセミナーもご活用いただいていますよね。
村中
WEBセミナーはとても勉強になりました。
弊社は私が本コースを受講させていただくまで、実はIEという言葉に馴染がありませんでした。
なので、WEBセミナーを別に申し込んで、工場で上映した方がいいのではないかというぐらいに、ものすごく勉強になりました。
平井
例年、日常業務でIEを全く使わないという受講者の方は決して少なくはありません。
実際に受講されて、最初は講義の内容がとっつき難いと思われる方もいらっしゃったかなと思いますが、テーマ1から受講されていかがでしたか。
村中さんのアンケートを拝見して来たのですけれど、難しいというコメントが見受けられました。
どのテーマが一番難しかったですか。
村中
講義は内容が濃いので、毎日のアンケートで簡単に理解しましたとは言えなかったですよ。テーマ1は導入としてすっと入って行けた印象があります。
テキストを読んで今でもここがいまひとつ理解し難いと思うのは、在庫の考え方や調達などですね。弊社のやり方とは異なっている点があったので。
セミナーの中で一番衝撃だったのは、開発のところです。
垂直立ち上げと、あと品質を維持していくところの講義だったと思うのですけれど、医薬品というのは、全てルールが決まっています。
いわゆるGMP(Good Manufacturing Practice)というのが法律であって、何か品質異常が起きたなら、それを正式に書類に残し、手続をし、合理的な判断をして、次に進まなければならないのですね。
そのためにルールを各社で制定していて、何か製造に関することを1つ変更するといっても、品質を維持するために、医薬品の世界は、他の業種の製造の会社さんの変更より、プロセスが複雑で合理的な根拠のハードルが厳しいはずなのですね。法律で決まっていますので。
立ち上げのトラブルか続くのはなぜか?
平井
以前にうかがったお話では、手洗い場の数や、石けんの数なども規制で決められており、とても厳しいのですよね。
村中
そうです。
GMPは別の見方をすると、自分たちでつくったルールを破ることは違反なのです。
ですから、物として全く問題がなくても、自分たちが決めたルールに則っていなかったなら、ダメだということですよね。
医薬品以外のもので極端に例えてみると、割れ物を持って社内を移送しなくてはいけない場面があって、「これは割れ物なので、歩く速度は毎分何m以内の速度で歩きなさい」という手順やルールを作ったとします。
歩いて持って行くというルールを明文化しているのに、そのルール外のことをしてしまった、例えば走ってしまったとしますよね。その場合は「逸脱」と言い、結果としてものが割れなかったから良いというのは認められないのです。
平井
結果ではなく、プロセスまでルールが及ぶのですね。
村中
結果として問題が起きていなくても、それを良品とするには手順が必要です。中身のチェックをしたけど割れていませんでしたでは不十分なんです。ルールを外れた範囲の大きさや割れていないというのはどうやって証明したのかなども重要です。
だから極端なことを言うと、協議の中で最初に歩かないといけないと決めたのはどんな根拠で誰が決めたがにまで遡って検証することもあるわけなのですね。
ルールも社内の手順の上に、医薬品の場合は、国の承認(医薬品製造販売承認)を品目毎に取得しなければいけないのですが、この承認書に書いてあるルール、手順と異なると、もうそれは承認書の内容を変更する手続きをしないと、良品とすることは不可能です。
例えば、その承認書の中に、「歩いて運ぶこと」と書かれていて、これを自分たちで「走って運ぶこと」に勝手にルールを変えると、それは承認に対しての違反(齟齬)になるのですね。
極端な例えでしたが、たまに医薬品の回収事例がありますよね。
物としては効き目に問題もないし、毒でもなく、患者さんにとっても不利益になることは何にもないのだけれど、自分たちで国に届けた内容に基づいて、自分たちがつくったルール以外のやり方で製造してしまったものを市場に出したら「回収」になるのです。
例えば、コースの中で触れられていた『立ち上げ事例の7割は同類・同質です』という話が印象に残っているのですけれど、弊社は恥ずかしながら立ち上げのときに同じようなトラブルが続くことがあります。
何を言いたいかというと、医薬品は先ほどのルールの話のように細かな製造管理や品質管理のルールがあり、開発垂直立上げの講義で聞いた内容で、やっておくべきポイントとされたことは、実はやっているのですよ。それなのにトラブルが減らない。正直ショックを受けました。
こうしてセミナー全体を振り返らせていただくと、一番大切だったのは、やはり初日の講義なんだろうと思います。
あるべき姿というのは、経営環境によって変わってきます。
その中で弊社が生き残っていくために、強化していかなければならないのはどこなのか。
コストダウンをしながら供給力をアップし、新しいものを投入していくという2本柱で行くときに、社内の人間はどう動かなければならないのか。
コストダウンし経常利益を10パーセント上げるためには、工場の生産原価をどれだけ下げなければならないのか。
購買はどれだけ削減しなければならないのか。
それらを経営目標から変換して現場に落としていかないといけないのですよね。
経営というか全体から捉えられると、工場が生産原価を下げるといっても、例えばコストを10パーセント下がりましたとしても、その内容は何なのかという話になります。
例えば、あるラインで10人が働いていたのを9人にして、レポートでは10パーセントのコストダウン達成として完結していたのが弊社のこれまでかと思います。
では、その1人はどうしたのでしょうか。
平井
浮いた分をどこか別の場所に配属ですか。
村中
そうです。そこまでできてコスト評価ですよね。
この1人が退職されたとかなら、10パーセントのコストダウンです。
しかし、その1人がほかのラインに行って余分な仕事をしていたら、他のラインは生産性がダウンしてしまいます。
全体として下がらないではありませんか。
その結果査定まで弊社はまだできていないのですよね。
例えば経営目標を工場で具体化していくと、今まで10人で1ライン、物量を増やすには単純に増員して20人で2ラインだったのを、人員を減らすだけでなく6~7人で2ラインどころか3ラインを動かすことを達成しなければならないかもしれないです。
投入人員を減らすためには、もっと使いやすい機械を買うか、あるいはもっと作りやすい物を設計しなければならないとなります。
そうなると工場の製造部門だけでは限界があって、他の製造のメーカーさんだと、部品や工程の共通化などは一般的なのでしょうが、弊社は、もう一歩開発時点での踏み込みが弱いかなと思っています。
そうなると、コストダウンは購買や工場だけではなく、開発からになりますよね。
経営指標やコストを意識したもう一歩踏み出した検討という着眼点とは?
平井
今日は包装の最後の工程を見せていただいたのですけれど、ここにいろいろな物が流れて来るのかと思うと、ちょっとドキッとしてしまいました。
村中
弊社の医薬品製剤の包装ラインはラインによって機械能力は異なるのですが、毎分50~60個の製品が出来上がってきます。複数のラインが動いているので見慣れないとドキッとされるかもしれませんが、それぞれ混じらないよう管理されているので、その点は大丈夫です。
ただ、生産効率という点では、一度、外部の方に簡易診断をいただいたことがあるのですが、あるラインのライン効率は60パーセント程度との指摘でした。
バランスロスが発生しているとは思っていましたが、数字で見て驚きました。
平井
一緒に見学していた方が、『ロボットをすごく贅沢な使い方をしている』と言っていましたね。
ラインの中で、箱の向きを変えるためだけのロボットがありましたが、もっといい方法があるのではありませんかとおっしゃっていて、なるほどとは思いました。
村中
そのような指摘をいただくところは、もっと見直していかなければいけないですね。見ていただいたロボットは、私は設備を決める当事者ではありませんでしたが、「ラインの繋ぎ部分をロボット化して、限られた設置スペース内で複数品目の対応ができるように工夫した」という結果のものでした。更なる生産効率というところまでは考えが及んでいなかったと思います。
先ほどの外部の方の簡易診断で、「意思の統率力と展開力」についての指摘もありました。
セミナーの初日の部分の話ですね。
弊社はトップが立てた目標がその下、その下に落とされていくと、だんだん薄まっていくというか、部門毎に目標を変換することが苦手かなと思います。
全体に響かせるというのはやはり簡単ではないですし、個々の意見も「そうだな、お前の言っていることは正しいよな」で終わってしまい、どこにも反映されず、何にも繋がらずに終わってしまっているところがあります。
ロボットの指摘をいただいた点も、贅沢な使い方をしている意識はなかったと思います。でも複数の意見や考え方が繋がっていたら、違うロボットを選定していたかもしれないですね。
今考えると、経営指標やコストを意識したもう一歩踏み出した検討という着眼点がなかったと思います。
私も当時、現場の方に、ロボットを入れたら物が速くできたり、人が減るのですかと聞いたら、いや、どちらも変わらないと言われ、少しがっかりした記憶があります。
そんな意見が繋がる仕組みが必要ですね。
平井
研修中にお話しされていたラインですね。
村中
研修中にもこのラインのお話をさせていただいていました。
安全とか別の目的での投資も、もちろんあるとは思いますが、やっぱり設備投資は、人員や工数の削減に繋がるかは大事だと思います。
見学いただいた全体の話のところに話が戻ってしまいますが、気づかれたかもしれませんが、弊社は限られたスペースに複数のラインを設置するために、ラインが直線ではなく、折れ曲がらせて配置させているものが多いです。この業界の他社さんは直線でラインを設置されることが多いのですが、その分広い部屋が必要となってしまうので、弊社ではラインを曲げることをいつも考えています。でも聞いてみると意外と珍しいようで、研修中もこの話をさせていただいたら、一緒にセミナーを受講した方から、珍しいので見学させて欲しいとのお話をいただきました。
平井
ぜひ今後も交流を続けてください。
例年、受講者間で個人的に工場訪問などはされているようです。
昨年の受講者の方に昨日お会いしてきましたが、その方もチーム内で職場訪問等されているようです。
村中
他の受講者の方との交流も本セミナーで良かった点の1つですね。凄く意欲的で、自分が得た知識からどうしていけばよいかを常に意識されている感じの方々もいらっしゃって、業界は違っていても、そういう方との出会いも私にとっては良い意味で大きかったですね。
セミナーでは先生方にも他の受講生みなさんにもお世話になりましたが、グループ演習では同じチームだった方のご経験にほんと助けられました。
演習の感想は?
平井
演習はいかがでしたか。
村中
私は話しながら考えて、1人で時間使ってしまうタイプなので、時間制限のある中ではチームの皆さんに迷惑をかけたと思っています。
平井
村中さんのチームのメンバーは、製造の経験がすごく長い方と、生産管理は今年初めてという方という構成でした。
村中
最初にブレーンストーミングで、問題点の抽出とかをホワイトボードに書きだしますよね。
改善とか生産方式とかやっている会社さんは、結構、ブレーンストーミングをするのでしょうけれど、私は職場ではあまりしたことが無かったのです。
ついに来たかという感じでした。
平井
いきなり意見を言ってくださいと言われても、なかなか出てこないものですよね。
でも、後ろで見ていると、村中さんは前に出て、よく意見を言ってくださっているなと思いました。
村中
どうしても意見を言わなきゃという気持ちが強く出てしまうのですが、過去に「ディスカッションをし過ぎると、結論に辿りつけなくなった」という失敗を経験したことがありまして、今回はそうならないように気をつけていたつもりですが…やっぱりやってしまったかなと反省しています。そんな調子だったのですが、伊庭先生がタイミングよく考え方のヒントをくださって修正できたのと、チームメンバーが、うまくまとめてくださって演習を終えることができました。
私のいたチームは3人だったのですが、私がワアッと言って、それに対してうんうんとうなずいて、こうしたらどうかという感じでまとめてくれる方と、冷静に双方の話から調整をしてくれて全体を見ている方、という感じでした。
そういう意味ではバランスがよかったかもしれないですね。
平井
毎回結構、遅くまで残って演習に取り組んでいただきました。お疲れさまでした。
村中
ほんと無事に終わってよかったです。
演習発表後の角田先生の講評も印象に残りました。
1人減るのは当たり前で、どうして2人減るところまで意欲的に踏み込まなかったのかとか、トップにしか決められないことをトップに促すプレゼン文句を含めてもいいという点です。
日常の業務の提案や企画でも生かしていけると思います。
平井
それはよかったです。
村中
角田先生は、WEB学習の方でも講師されていて、自宅でも拝見していたので、すごく親しみを感じました。
角田先生の話し方はわかりやすいですね。
にこやかに、わからなくて当然のような感じで、きついことを言いながら笑っていらして、あれは勉強になりますね。
ものづくりの基礎知識と改善の考え方を身に着けることができた
平井
村中さんにはWEBセミナーもご活用いただきました。毎回のアンケートを見ていると、「講義の内容が難しい」というようなことも書かれていましたが、自主学習にも励まれて筆記試験は最高得点だったと講師から伺っています。
セミナーをご受講いただいて、どういった点が一番よかったと思われますか。
村中
月並みですが、やはりものづくりの基礎知識と改善の考え方を身に着けることができた点です。
考え方の整理がついたというか、おぼろげだったところが、クリアになりました。
ものづくりといっても、調達もあり、サプライチェーンもあり、方向性は1つからではないということも改めて整理できてよかったです。
在庫とは工場だけではなく考える点とか、1つ1つの作業の時間短縮もありますけど、構内物流とは何なのかというところもあったり、固定費はどうなのか、変動費はどうなるのかを考えないといけないといったお金の話もありました。
それと未来を意識するお話もよかったですよね。
IoTの現在とか、SWOT分析で自分の会社の強みや弱みを意識しなければならないというところもありました。
基礎やベースはこれだけど、これも知っておいた方がいいというテーマや、覚えておくべき必須部分など、多岐にわたっていたのですが、全部で10日間、5回に分けての講習だったから身につけられたのだと思います。
短期間の詰め込みでは、1カ月もすると忘れてしまうのですよね。
平井
構内物流とか調達の話は、自分の業務とは関係ないとシャッターを下ろしてしまう場合も多いと思います。
ですが、大きな流れの中で自分の業務の前後に違うものがあるということを知るか知らないかで、すごく変わってくると思います。
村中
スタートから知識を持つのは難しいと思います。
私がセミナー受講に際して幸いだったのは、私は生産管理に所属していますが、これまでの異動の経験から広く浅くいろいろな部署のことをなんとなく知っています。
セミナーでいろいろなテーマがありましたが、その話を聞いたときに、これは会社のどの部署がやっている業務の話なのかイメージできるかどうかが、大きなポイントだったと思います。
社内のあの部署であの人が何をやっているかなどは、実は知らない人が多いのですよね。
平井
そうなりがちですよね。
村中
弊社でも、例えば弊社には品質保証室(QA:Quality Assurance)という部署と、品質管理部(QC:Quality Control)という部署がありますが、区別がついていない人が多いようで、QAに連絡してくださいと言っているのに、一生懸命QCに連絡している人もたまに見うけられます。
このセミナーは自分の会社の全体機能がイメージできる人には、すごく勉強になるのではないかと思いました。
私は転職も経験していて、前職では製造作業の設計や開発の経験もあります。
今日、見ていただいた包装ラインのような中に入っての作業の経験もありますし、十数名の方たちとセル生産みたいなこともやったこともあります。
20代のころに今の自社以外の工場や仕組みも経験しているので、弊社の工場とは違う例の話がでてきても抵抗が少なかったというか、とっつきやすかったというのがありますね。
受講を検討している人たちへのメッセージは?
平井
これから受講される方に何かアドバイスはありますか。
村中
受講する方の受講理由で一番多いのは、多分、会社側から行くように言われたからだと思います。私もそうでした。でも折角なので、やらされている感があるともったいないです。
講義では、先生も初日からアクセル全開ではありませんが、ゆっくりでもなく、結構どんどん進めて行かれます。そのときに絶対にわからなくなることや、ついていけないところが出てきますが、そういうときには、直ぐに「わからない」、「ついていけない」と正直に手を挙げて質問していくことが大切なのかなと思います。自分から発信して話の中に入っていかないとやっぱり理解ができないです。その上で、その聞いたことを持ち帰って誰に話すかがイメージできると、すごく勉強になると思います。
私は、講義を聞いて質問しないというのは、出ていないのと一緒という意識がすごく強くあります。私の営業時代の上司の教えですね。社外の講演会に行ったなら、まず最前列に座り、そして必ず質問して帰ろうと言われました。
当時は営業だったのでそうすることによって、弊社の存在を先生にも周りにも覚えてもらおうという目的もありました。でも実際質問する前提で話を聞くと、集中もしますし、要点を得ない質問もできないし、と考えながら聞くので、内容が頭の中に残ります。
その習慣が残っていて、今回もたくさん質問をさせていただきました。
平井 その心づもりで来ていただいてよかったです。
村中
私自身、楽しかったですね。
終わって寂しい気分がありました。
日常業務に追われずに、頭を使って一般的な勉強ができるのは、あまりない機会だったので楽しかったです。
平井
当コースでは、フォローアップの意味合いも込めて、受講者の方をものづくり総合大会へ3日間ご招待しています。2月のものづくり総合大会にも村中さんには来ていただけると聞いています。
あちらは質問の形式が挙手ではなく、休憩時間に質問票を記入いただいて、それをコーディネーターがとりまとめをするという形ではあるのですけれど、ぜひ活発に質問をお願いしたいと思います。
ものづくり総合大会は、どちらのセッションにご登録されましたか。
村中
私は全部A1~6セッションです。
私は医薬品に関してはいろいろな工場を見せていただいたこともありますし、講演会に行かせていただいたこともあるので、今からは医薬じゃないところをと思って、医薬以外の講演会にしました。
平井
2日目はコマツ、日立、それからGEですね。3日目はGOODFACTORY賞を受賞した国内工場の講演です。
いずれも本当に人気のセッションで、満席で既に受付を締め切らせていただいているセッションもいくつかあります。
村中
今、おっしゃったのは全てセミナーの例で出てきた会社さんばかりですね。
初日にはファナックさんがありますよね。
平井
ファナックさんとデンソーです。
ぜひ、バンバン質問してくださいね。
村中
セミナーで、ファナックさんはシステムとか管理を商品として販売されているので、管理室にはモニターが全部あって、今はどこの何がどう動いている、止まっているというのがわかる。という話を伺ったのですが、それは良いですね。弊社への導入も提案したくなります。どこで何が止まっているのかがすぐにわかりますから、出荷に辿りつかなくなるということがなくなると思いますよ。これはいいですよ。
やるやらないは後としても、私の社内の人も、まずは面白いと聞いてくれると思います。
平井
そういう意見を言う場があって、通りやすい風土はあるのでしょうか。
村中
意見交換する場というのが特にあるわけではないのですが、弊社のユニークなところは、上層部と一般社員の距離がすごく近いことです。
弊社は社長方針で、社内で人を役職で呼ぶのを禁止していまして、全部「さん」づけで呼びます。
統制上は役職の責任はもちろんあるけれど、仕事は対等だという考え方ですね。
社長を呼ぶときも「さん」づけなのですよ。
距離が近いので例えば、生産の調整会議とか、月次の実績会議とかに取締役や執行役員、経営企画が参加することがあるのですが、そこで、「今、行っているセミナーでこんな話を聞きましたよ。うちはどうですかね」といった話を直接できます。そういうところで上層部と意見共有できることは多いですね。
平井
共有できるかできないかで大違いですね。
村中
「さん」づけもそうですが、実は今の社長は、私が品質保証にいたときの上司で私の性格まで知っておられます。社内で会った際も、われわれと目線を合せて、結構、声もかけてくださるので、研修でこういうことがあって、こういうことが課題だと思っているなど、ちょっと話させてもらうとか、そういうことができる風土はありますね。
ただ、会議とかでいろいろな人と話をしても、それでは雑談の延長に留まってしまうことが多いというか、いざ業務に戻りそれを実現できるかはまた違ってきます。
今回の研修をもとに若手向けの勉強会を提案したいと思っているのですけど、研修が終わって1カ月で、ようやくその資料をまとめたところで、まだこれからですよね。
平井
これからそれを展開していくのが村中さんのご使命ですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
村中
こちらこそ、ありがとうございました。